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雇用契約に必要となる労働条件通知書の詳細と電子化の解禁がもたらすもの

法改正より電子化が可能となった労働条件通知書

新規に従業員を雇い入れる際、労働基準法の第15条により雇用主は労働者に対し、労働条件通知書を明示する必要があります。ただし、労働条件通知書はこれまで紙媒体の書面であることが義務付けられ、電子媒体による明示、いわゆる電子化が認められていませんでした。

そこで企業の労務管理の現場では雇用契約の際に、電子署名も可能かつ、労働条件通知書と兼用されることが多い雇用契約書によって電子媒体で契約を締結した後、紙媒体で労働条件通知書を交付する、あるいはどちらも紙媒体で労働条件通知書を交付するといった、効率的とはいえない業務がしばしば発生していました。

しかし、2019年4月1日より、「働き方改革」推進の一環として労働基準法施行規則の改正が実施されたことにより、現在では労働条件通知書の電子交付が可能になっています。

この労働条件通知書の電子化解禁は、在宅勤務やテレワークの普及によっての業務のデジタル化が進む昨今、時代に即した業務スタイルへの変革のひとつとして、また労務関連業務の煩雑さを解消や利便性向上、業務負担軽減の観点から、多くの企業、とりわけ人事・労務部門において大きな期待を集めています。

労働条件通知書とは

労働条件通知書とは労働条件について労使間の認識に隔たりがないよう、雇用主側が労働者に対して交付する文書です。交付は労働基準法15条により正社員のみならず、パートなどの含めた全従業員に交付することが義務付けられています。これは、労働基準法が立場の弱い労働者を保護するため、雇用契約が成立した際に主要な労働条件を明示するよう、雇用主に対し要求しているからです。

ただし、労働基準法第15条に含まれる「書面を交付」という文言を法的根拠としていたため、2019年の法改正以前は電子化が認められていませんでした。

また交付が義務付けられている一方で、労働条件通知書という呼称はこれまで伝統的に用いられ、法律に規定されたものではなく、書式も決まっていませんが、必須となる項目は定められています。

労働条件通知書に必要とされる記載事項

労働条件通知書に必須となる項目は労働基準法上の労働条件の明示に準拠します。それら絶対的明示事項は次のような項目です。

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労働契約の期間やその更新の基準

労働条件通知書には、まず労働契約の期間を必ず記載しなければなりません。また、派遣社員やパート・アルバイトなど労働契約に期限のある雇用形態の場合には、その期間と更新の基準や条件について明記する必要があります。

就業場所と業務内容

就業場所や業務内容についての記載も労働条件通知書には必須です。就業場所は勤務する部署や店舗、業務内容も具体的に記載します。このほか、始業および終業就業時刻、休憩時間、所定時間外労働などについての記載も必要です。

休日・休暇

労働基準法では労働者の雇用にあたって法定休日が定められているため、休日・休暇についての記載も必要です。法定休日は最低限労働者に与えなければならない休日の日数で、週1回、あるいは週間のうち4日必要となり、実際には週休2日制が定着したことにより、これ以上に休日を設けている企業が少なくありません。

また、1年単位の変形労働時間制を採用している企業では年間休日を記載する必要があります。

賃金に関する事項

賃金は最低賃金法で定められた最低賃金を把握したうえで具体的な金額を記載します。企業によっては基本賃金とは別に家族手当や通勤手当といった諸手当を支給しているケースも多いため、これらの額や計算方法も併せて明記します。

退職に関する事項

定年やさまざまな事情によって退職する場合の手続きや方法について記載します。また社会保険の加入状況や雇用保険の有無についても記載が必要です。

労働条件通知書の電子化における要件

労働基準法施行規則の改正により、電子化が認められた労働条件通知書ですが、交付には所定の要件を満たしていなければなりません。該当するのはパソコンやタブレット、スマートフォンなどによるEメール、あるいはウェブメールサービスの利用、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)のメッセージ機能、ファクシミリサービス(FAX)などです。

一方、SMS(ショート・メッセージ・サービス)による労働条件通知書の交付は禁止されていないものの、添付ファイルを送付できないこと、メッセージの文字数に制限があること、書面作成を念頭に置いたサービスでないことなどから、労働条件明示の手段として法律の趣旨に沿わない方法といえます。

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労働条件通知書の電子化の方法

労働条件通知書の電子化に際して、特に決まったフォーマットは法律などにより定められていません。このため、労働条件通知書と雇用契約書を1枚にまとめた様式で作成するほか、独自の様式で作成しても問題はありません。また、厚生労働省のホームページにはダウンロード可能な形式でいくつかの様式が掲載されているため、これらを参考にすることもできます。

このほか、労働条件通知書の作成を代行するクラウドサービスも多数存在することから、これらを利用することもできます。

労働条件通知書電子化の条件

雇用契約書同様、電子化が可能になった労働条件通知書ですが、3つの条件が定められています。仮に条件に反し電子化された形で労働者に対し明示した場合には、契約の解除や罰金が課される可能性もあるため注意が必要です。

労働者が電子化を希望している

労働条件通知書の電子化においては、労働者が希望していることが条件となり、雇用主が一方的にこれを行うことが認められていません。本人の意向を確認せずに電子化を行った場合には労働基準関係法違反により、最高で30万円以下の罰金となることもあります。

そこで新たに労働者を雇用する際には、内定段階で電子化の希望の有無を確認しておく必要があり、紙媒体を希望した場合には、労働条件通知書を電子化することはできません。

印刷できる形式であること

電子化された労働条件通知書は、雇用主側だけでなく労働者側も紙面に印刷可能な状態である必要があります。これにより、特定の電子デバイス上でしか閲覧できない形式や印刷を前提としていない形式、期限付きのファイルなどを使用した場合、電子化の要件を満たさない場合があり、状況によっては省令違反とみなされる可能性があるため注意が必要です。

受信を特定の者に限る電気通信であること

労働条件通知書を労働者に電子通信によって送付する場合には雇用した労働者本人のみが閲覧可能な方法でなければなりません。このため第三者がアクセスできるウェブサイト上や誰でがダウンロードできるような共有フォルダなどにアップロードすることは省令違反とみなされる可能性が高いと考えられます。

雇用契約書と労働条件通知書の違い

労働条件通知書と兼用されることが多い雇用契約書は、民法をもとに雇用について作成される文書です。労働条件通知書と準拠する法律は異なるものの、記載事項は似通っており、実際の雇用契約の際には雇用契約書のほうがより多く用いられます。

また、労働条件通知書は交付と保管が義務化されているのに対し、雇用契約書にはこうした義務はありません。これは、準拠する民法では契約の成立に書面などの「形式」を必要としない「意思主義」を基本としているからで、一部の例外を除き口約束だけでも契約が正式に成立させることができ、これは雇用契約についても同様です。

つまり、民法では雇用契約は企業と労働者双方の意思が確認できれば成立するとされ、そもそも書面にする必要性自体を求められないことから、労働条件通知書のように電子化についても規制されません。

一方、労働基準法では立場の弱い労働者を保護する目的で、雇用契約が成立した場合には主要な労働条件を労働者に明示することを雇用主に要求しているため、労働条件通知書については交付が義務付けられ、2019年4月以前は媒体として残らない電子化が認められていませんでした。

また、労働条件通知書は雇用に関する条件を細かく記載し、かつ雇用主側から一方的に通知されるのに対し、雇用契約書は記載内容について労働者の同意が必要とされるため、署名・捺印が必要です。

これらを踏まえ、実際の雇用契約においては、労働条件通知書のみ交付する、あるいは労働条件通知書と雇用契約書をそれぞれ交付する、また労働条件通知書と雇用契約書を1枚にまとめるといった3つの形式が考えられます。ただし、いずれにしても労務管理上のリスクを減らす観点から、労働条件通知書と雇用契約書についてはどちらか一方を作成するのではなく、双方を作成しておくことがベターといえます。

労働条件通知書電子化のメリット

労働条件通知書を電子化した場合、時間と労力の削減によりさまざまなメリットがもたらされます。では、それらを詳しくみていきましょう。

人事・労務部門の業務効率化

労働条件通知書を電子化が認められる以前は、雇用契約書などの他の手続きを電子化したとしても最終的には労働条件通知書を労働者に対し紙媒体で明示しなければならなかったため、雇用に関して人事・労務部門で発生する業務が効率的ではありませんでした。しかし労働基準法施行規則の改正に伴い、労働条件通知書を電子化すれば、他の入社手続きに必要なタスクなども一括してクラウド上のシステムに移行することなどによって大幅な業務の効率化が図れます。特にパートやアルバイトなどの労働期限のある労働者が多い企業や、店舗や支店の多い業種ではその効果が大きいといえます。

コンプライアンスの強化

労働条件通知書をはじめとした書類の電子化では、電子署名とタイムスタンプによって契約内容の改ざんリスクを最小限にすることができます。電子署名があればデータの改ざんを誰もが容易に確認することができ、キャビネットを常に施錠するといった管理の必要もないだけでなく、万が一データが紛失しても、復元することが可能です。このように、電子化されたデータは紙媒体よりもリスクの可視化が容易で、検索性も高いことからコンプライアンス強化を図ることができます。

労働条件通知書電子化のデメリット

労働条件通知書を電子化は人事・労務部門にさまざまなメリットをもたらしますが、導入によってデメリットとされる点の認識も必要です。

社内外への説明や導入準備が必要

労働条件通知書を含め、書類の電子化を進める際には、少なからず従来の業務フローに変化や変更が発生するため、業務の当事者が抵抗感を示すことも考えられます。このため、結果的には導入以前と同様に業務が進行できるとしても、社内や社外への説明を積極的に行わなければなりません。また、電子化に伴いベンダーから提供されるサービスを利用する場合などは、導入後のフォローとして説明会開催などの相談も検討する必要があります。

サイバー攻撃の可能性が否定できない

書類の改ざんリスクなどを回避し、コンプライアンス強化に役立つ労働条件通知書の電子化ですが、一方で電子化することにより管理サーバーへのサイバー攻撃が発生しないとはいい切れません。

そこで電子化にあたっては一か所で全てのデータを保管せず、リスクや脅威を分散するためにブロックチェーンなどの技術を導入する必要があります。こうした点から、何らかのサービスを利用して労働条件通知書の電子化を進める場合には、どういったセキュリティに自社のデータを委ねるのかも、事前の検討基準となります。

人事・労務部門の業務効率化に結びつく労働条件通知書の電子化

現在、少子高齢化に伴う労働人口の減少から、企業における人材の確保が難しくなっています。このため、採用競争力を維持は、企業競争力を維持するためにも非常に重要です。そしてこれを実現するためには、人事・労務部門が煩雑な事務作業から解放され付加価値の高い業務と向き合う体制の構築が欠かせません。労働条件通知書の電子化はこうした業務効率化の一端に過ぎませんが、一方で大きな足掛かりのひとつであることもまた事実です。

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